
アイナ:「じゃあね、リューくん」
寂しそうな顔で、アイナねーちゃんが手を振る。
教官であるねーちゃんとは、ここでお別れだ。
アイナ:「ちゃんと教室に行くのよ?」
リュー:「わかってるよ」
アイナ:「お友達と仲良くするのよ? ケンカなんかしちゃダメよ?」
リュー:「しないよ。大丈夫だって」
心配性のアイナねーちゃんは、毎朝こうやって俺のことを気にしている。アイナ:「寂しくなったら、いつでも教官室に来るのよ?」
リュー:「行かねぇよっ! いいかげんにしろよ、ねーちゃん!」
アイナ:「だってぇ……もしリューくんが1人で寂しがってるんじゃないかと思うと、アイナも悲しくなっちゃうんだもん」
リュー:「だもんじゃねぇよ、まったく……」
こんなやりとりを毎朝繰り返している。
ねーちゃんのブラコンぶりにも困ったもんだ。
アイナ:「同じ学園の中にいるのに、リューくんとはほとんど会えないなんて、アイナ、泣いちゃう」
リュー:「しょうがないだろ、ねーちゃんは上級クラスの担当なんだから」
ここセバ学には、上級、中級、初級の3つのクラスがある。
元々は、その名の通り、能力別のクラス分けだったのだが、今では、入学時は全員初級クラスに入ることになっている。
そこから1年ごとに自動的にクラスは上がっていくのだ。
もちろん、能力の傑出したヤツに対しては、飛び級ということもできる。
しかし、この制度ができてから、実際にその対象になったのは、アイナねーちゃんただ1人らしい。
卒業後、その力を買われたねーちゃんは、こうしてセバ学の教官を務めているわけだ。
リュー:「俺は初級クラス。ねーちゃんは上級クラスの担当。会えなくて当然だろ」
アイナ:「うふふっ」
リュー:「ん……?」
アイナねーちゃんは、どこか意味深に笑った。
リュー:「何? その笑いは?」
アイナ:「ううん、何でもない……うふふっ」
あ、また……
気になるなぁ。
アイナ:「じゃあ、アイナ、もう行くね」
リュー:「へいへい。じゃあね」
アイナ:「今日も一緒に帰ろうね、リューくん♪」
リュー:「気が向いたらね」
アイナ:「うっ……」
目に涙を浮かべるねーちゃん。
リュー:「ああ、ウソウソ。帰る帰る。一緒に帰ります」
アイナ:「うふふっ、よかった。じゃあね」
笑顔で手を振りながら、ねーちゃんは教官室に向かって行った。
リュー:「はぁ……疲れる」
こんなやりとりを、俺がセバ学に入って以来、ほぼ毎日続けていた。
リュー:「それにしても……」
あのねーちゃんの意味深な笑み。
何となく気にかかる……
リュー:「まぁ、ねーちゃんが変なのはいつものことだからな」
俺は気を取り直して、教室に向かった。